home>はじめての『旧約聖書』>第2回 「選び」と「契約」
はじめての『旧約聖書』
第2回 「選び」と「契約」
「選び」の歴史
旧約聖書の「出エジプト記」は、古くからの口伝をもとに編集して、紀元前5世紀ごろできあがった書物です。イスラエルの民が、共にいてくださる神を体験した “エジプト脱出”の出来事を書いたものです。エジプトで、厳しい奴隷生活を強いられていたイスラエルの民は、神の無償の愛、つまり、神のいつくしみと好意によって、その過酷な生活から救われたのでした。
「神が特別の好意をもって、自分たちを救ってくださった」という“選び”の体験は強烈なもので、イスラエルの民の古い信仰告白にたびたび出てきます。イスラエルの歴史の中で、この神からの“選び”は、その後もずっと続いていきました。
シナイ山での「契約」
神が示してくださる「約束の地」を目指して、イスラエルの民がエジプトを脱出してからずーっと、神は先になり後になりしてイスラエルの人々を導き守ってくださいました。民はエジプトを出てから3か月目に、シナイの荒れ野に着き、そこに天幕を張って宿営しました。モーセは山に登り、神の語りかけを聞きます。
シナイ山
ヤコブの家にこのように語り
イスラエルの人々に告げなさい。
もし、わたしの声に聞き従い
わたしの契約を守るならば、
あなたたちはすべての民の間にあって
わたしの宝となる。
あなたたちは、わたしにとって
祭司の王国、聖なる国民となる。
(出エジプト記19章3、5~6節参照)
こうして、神とイスラエルの民は契約を結びます。この「契約」は、イスラエルの民の原点です。
「選び」と「契約」は、旧約聖書のテーマです。この神からの「選び」と、神と民との「契約」によって、イスラエルの民はヤーウェの誠実な愛を、さらに深く体験していくのです。
長い歴史の中で、民はたびたび神にそむくのですが、どこまでも誠実な神は選びを取り消されることなく、いつか民が立ち帰る(回心)なら、ふたたび蜜月の時がくることを約束されていました。
キリスト教会は、イエスによって、その新しい時代(新約)に入ったと信じているのです。
「旧約聖書」の書物
第2バチカン公会議まで、カトリック教会の中で公に使われていた聖書は、ヒエロニムスによってラテン語に訳された(4世紀末)「ブルガタ訳聖書」です。
キリスト者にとって、聖書は一つで、旧・新約聖書、両方がそろってこそ、聖書と言えるのです。聖書は、旧約聖書は第二正典を含めて47書、新約聖書27書、計73の書物からできています。全体が、「救いの歴史」の物語として、一貫性をもって書かれています。旧約・新約をとおして表現されているのは、“いつくしみと憐れみ深い神”です。
ユダヤ教の正典
紀元前2世紀のマカバイ時代に、標準となる書が定められていきますが、70年のローマによるエルサレム滅亡の後に、ユダヤ教復興運動が起き、90年の「ヤブネの宗教会議」によって、ユダヤ教の正典が定められました。
ヘブライ語(一部はアラム語)で書かれています。長い間、ユダヤ人の間で親しまれ、尊ばれた書であっても、ギリシア語で書かれたものは、正典と認めなかったのです。カトリック教会は、そのうちのいくつかを、第ニ正典として認めています。
古来、ヘブライ語は子音のみで記され、読むときに母音をつけていましたが、ヘブライ語が日常語でなくなったあと、聖書の本文を正確に伝えるために、母音を表す音標をつけて「マゾラ本」と呼ばれるものが完成しました。現在、一般に読まれているのは、このマゾラ本です。
マゾラとは伝承の意味で、7世紀ごろから10世紀までかけて、この研究に従事していた人たちを、マゾラ学者と呼んでいます。
旧約聖書の舞台
旧約聖書は、メソポタミアからエジプトにかけて広がる三日月型の地に展開されていきます。約束の地、パレスチナはその中間にあたります。
エジプト
- オリエントの西の端に位置する。
- 定期的におきるナイル川の氾濫を利用して、農業が盛ん。
- 紀元前4千年期に王朝がはじまる。
- ギリシャの支配下に入るまで、4000年以上もの長い間、 独立国家として存在した。
- ユダヤ人は「エジプト」を「ミツライム」と呼んだ。
- パピルスがあったため、文献がたくさん残っている。
- イスラエルは、エジプトから宮廷の組織を取り入れた。
メソポタミア
- チグリス・ユーフラテス川の氾濫は、定期的でなかったので、
- 紀元前3000年ころからの都市国家
- シュメール人のくさび形文字を使用し、粘土に彫って書いた。
- アブラハムは、この地の出身である。