0 Laudate | アレオパゴスの祈り

home>祈り>アレオパゴスの祈り>2010年8月

アレオパゴスの祈り

バックナンバー

 

アレオパゴスの祈り 2010年8月7日


ひまわり



   わたしは、あなたたちのために立てた計画をよく心に留めている、
   と主は言われる。
   それは平和の計画であって、災いの計画ではない。
   将来と希望を与えるものである。
                (エレミア書 29.11)
 

8月は、毎年、平和への願いを込めて祈る月です。8月15日が近づくと、「戦争の記憶や体験」がさまざまな側面から語られます。

1981年、時の教皇ヨハネ・パウロ2 世が広島を訪れたとき、「戦争は人間の仕業です。戦争は人間の生命の破壊です。戦争は死です」と訴えられました。これにこたえて日本の教会は、「日本カトリック平和旬間」を定め、広島に原爆が投下された8月6日 から8月9日の長崎の原爆投下をはさんで太平洋戦争敗戦に至る8月15日までの10日間を、平和のために祈り、平和について学び、行動する期間としています。

今年は戦後65年。昨年のオバマ大統領のプラハ演説以降、核兵器廃絶に向けた動きが全世界の注目を集め、武力によらない紛争解決の期待が高まっています。この動きの中で、日本のカトリック司教団は、「非暴力による平和」の精神を思い起こし、東京教区の平和旬間委員会は今年のテーマを「非暴力による平和」としました。この期間、全国各地で、平和祈願のミサや講演会、研修会をはじめ、平和をテーマとしたいろいろなイベントが行われます。今晩の「アレオパゴスの祈り」においても、平和を願い、考え、ともに祈りをささげましょう。

また、夏休みを過ごしている子どもたちのために祈りたいと思います。子どもたちが犠牲になる事件が後を絶ちません。子どもたちが、のびのびと健やかに成長するように、周りの大人たちが、見守り、助け、支えていくことができますように。この願いを込めて祭壇にローソクをささげましょう。祭壇上のハガキをお取りになって席へお戻りください。

新約聖書の使徒パウロのエフェソの信徒への手紙を聞きましょう。

エフェソの信徒への手紙 2.14~18

実に、キリストはわたしたちの平和であります。二つのものを一つにし、御自分の肉において敵意という隔ての壁を取り壊し、規則と戒律ずくめの律法を廃棄されました。こうしてキリストは、双方を御自分において一人の新しい人に造りあげて平和を実現し、十字架をとおして、両者を一つの体として神と和解させ、十字架によって敵意を滅ぼされました。キリストはおいでになり、遠く離れているあなたがたにも、また、近くにいる人々にも、平和の福音を告げ知らせられました。それで、このキリストによってわたしたち両方の者が一つの霊に結ばれて、御父に近づくことができるのです。
 

(沈黙)

 

この手紙を書いたパウロは、キリストは、わたしたちの平和であると述べています。キリストは、人間の間にある敵意を完全に取り壊して、十字架をとおして、平和を作り出したと言っています。どちらか一方を他方に吸収することによる平和ではなく、両方を「一人の新しい人」の中へと、作りあげる平和です。キリストという「一つの体」の中で和解させる平和です。

敗戦から65年を迎えようとしています。戦争を知らない人々が多くなりました。1981年、2月25日、教皇ヨハネ・パウロ2世は「平和の巡礼者」として広島を訪れ、平和記念公園で世界の人々に向けて「過去を振り返ることは将来に対する責任を担うことです」と繰り返し訴えました。この言葉は今もわたしたちの心に響いています。特に今年は世界でも日本でも平和を求める声がわき起こりました。世界では核廃絶への声が高まり、日本国内では沖縄の「もう基地は要らない」という声です。

昨年の4月5日、米国のオバマ大統領はチェコ共和国の首都プラハにあるフラチャニ広場で、核兵器のない世界の実現を訴えました。超軍事大国の指導者であるオバマ大統領は、信念をもって、アメリカが核兵器廃絶の先頭に立つことを宣言しました。

また、今年の5月には、国連本部で核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開かれました。この会議にあわせて、カトリック長崎大司教区の高見大司教は、長崎原爆で破壊された被爆マリア像とともに、核兵器廃絶に向けての要請文(今年2月、米国大統領や各国指導者あてに発表)を世界にアピールするために、ニューヨークを訪問しました。

聖パトリック大聖堂でのミサの中で、マリア像は、被爆者や信徒たち約千人の大きな拍手で迎えられました。高見大司教は「わたし自身も胎内被爆者です。多くの被爆者が核兵器をなくす行動に参加しています」と語り、米国市民と国連関係者に核廃絶を訴えました。「被爆マリア」は、数知れない原爆被害者とすべての戦争被害者の叫びを、焼けただれたお顔をもって、言葉では訴えることのできないメッセージを世界の人々に伝えました。

この歴史の大切な節目に、わたしたちも自国のことを知り、事実を振り返りましょう。「敵意という隔ての壁を取り壊し」、真の和解へとわたしたちを導いてくださるキリストを見つめ、今年も平和旬間において、平和を祈り、平和のために行動していくことができますように。

「平和のための祈り 2010」をご一緒に唱えましょう。

   全能の神よ、
   あなたがお造りになったこの美しい世界は
   多くの戦争によって汚されてきました。
   あなたがお造りになった人間は、
   数知れない兵器によって
   いのちを奪われてきました。

   神よ、わたしたち人類に、
   核兵器や軍事基地に頼るのではなく、
   非暴力による平和への道を歩む
   勇気と知恵をお与えください。
   十字架によって、
   すべての人の和解をもたらされた
   主イエス・キリストをとおして
   この祈りをささげます。アーメン。
               (東京教区 平和旬間委員会)
 

12世紀後半から13世紀にかけて、イタリアのアッシジという小さな町にフランシスコという、貧しく質素な生活をとおして、神さまの愛を人々に表した人がいました。彼が説教すると、小さな鳥たちまで集まって、耳を傾けたというエピソードも伝えられています。お手元にあるハガキの平和の祈りは、フランシスコが生涯をとおして生きた祈りです。

時は流れ、第2次世界大戦が終わった、1945年10月、サンフランシスコで開かれた、国連の会場で、この祈りが読まれたと伝えられています。この平和の祈りは、今も、世界中の大勢の人々から愛好され、平和の実現のために祈られています。

神が、今日、世界の平和を願ってここに集まっているわたしたち一人ひとりを祝福し、
  慰められるよりは慰めることを、
  理解されるよりは理解することを、
  愛されるよりは愛することを、
  求める広い心を与え、真の平和をもたらす者としてくださいますように。

 

鳩
サンピエトロ大聖堂 ステングラス

 

今から七つの祈りをささげます。一つひとつの祈りの後に、歌集「祈りの歌を風にのせ」20番"キリストの平和"を歌います。

わたしたちに悲しみをもたらすすべての核兵器、戦争や争いをこの世界から取り除いてください。世界の国々が自分の国の利益を第一に考えるのではなく、同じ世界に生きる人間として、相互の信頼と理解を深め、見せかけの和睦ではなく、まことの平和を築くことができますように。

キリストの平和

世界の政治や経済を指導する立場にあるリーダーたちのために祈ります。彼らが、正義に従って実行する勇気をもち、世界の人々が平和と平等のうちに生きるよう導いてください。

キリストの平和

人間生活を不幸に導く無秩序や自然環境破壊の悪に人々の目を開かせてください。わたしたちが、すべての人のために造られた世界を大切に保存し、発展させていくことができますように。

キリストの平和

今、日本で自殺する人の数は、12年連続で年間3万人を超えています。また、自殺未遂は、少なくともその10倍と言われています。わたしたちと同じ日常を生きている人たちが、過労や多重債務、いじめや介護疲れ、差別や社会に対する不信感などさまざまな社会問題に追い詰められた末に、生きる道を閉ざされて、亡くなっています。自殺に追い込まれていくいのちを、本気で受けとめ、みんなでつながりながら助け合い生きていくことができますように。

キリストの平和

世界では未だに400万人もの18歳に満たない子どもたちが人身売買されているとユニセフは報告しています。貧困を理由に、幼い子どもたちが幼児性愛の対象や臓器売買を目的として金銭取引され、また、日本では、毎年3000人の子どもたちが児童買春・ポルノなどの被害に遭い警察に保護されています。大人たちのエゴによって、このような子どもたちは心身ともに傷つき、彼らの将来は、暗く希望のないものになってしまっています。彼らの心が癒され、この闇から完全に解放されますように。

キリストの平和

全国の自治体では、毎年30万頭を超えるイヌ、ネコが殺処分され続けています。飼い主の都合で捨てられたり、ペットショップでの売れ残ったり、ブリーダーによる繁殖能力の衰えたイヌ、ネコたちが人間の勝手な都合によっていのちを無惨に奪われている現実です。そんな中、"殺処分ゼロ"を目指して努力している自治体もでてきています。神さまが作られた動物と人間とがともに共存していけるよう、これらのいのちを救う努力をしていくことができますように。

キリストの平和

すべての人の心に中に、平和の知恵と正義の力と兄弟愛の喜びを注いでください。わたしたちに、憎しみには愛、不正には正義、戦争には平和をもってこたえることができる英知をお与えください。貧困をなくすために努力し、簡素な生活を選び、連帯する勇気をお与えください。

キリストの平和

東京教区の岡田武夫大司教は、「祈りのリレー」への参加を呼びかけて次ぎのように言っておられます。「平和を実現する人は幸い!」平和のために何ができるでしょうか。いろいろとあるでしょうが、一つ、だれにでもできる確実によいことがあります。それは祈るということです。では何をどう祈ったらいいでしょうか? 自分の祈りにあわせて自分は何をしたらいいでしょうか? この機会に考え、話し合いましょう。そして自分の祈りを、場所を越え、時間を超えて、世界の兄弟姉妹の祈りにつなげるよう努めましょう。

「祈りのリレー」は、昨日の8月6日(金)午前8時から開始され、8月15日(日)の午後8時に終了します。この10日間の期間中、絶え間ない祈りに、いつでも、どこでも、参加できます。お祈りは、主の祈り、聖母マリアへの祈り、ロザリオの祈り、自分の言葉での祈りなどです。「祈りのリレー」への応募は、東京教区本部事務局に、ファクシミリ、ホームページ、また、郵送で申し込みできます。

最後にマザー・テレサがおっしゃっている言葉に耳を傾けましょう。

   平和は ほほえみから始まります。
   笑顔なんかとても向けられそうもないと思う人に、
   一日5回はほほえみなさい。
   平和のためにそうするのです。
   神の平和を輝かせ、神の光をともして、
   世界中のすべての人々から、
   あらゆる苦しみや憎しみや権力への
   執着を消し去りましょう。
                  (エレミア書 29.11)
 

これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。


「アレオパゴスの祈り 年間スケジュールと祈りの紹介」に戻る

▲ページのトップへ