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アレオパゴスの祈り

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アレオパゴスの祈り 2016年12月 3日


 ミッドタウン イルミネーション


今年最後の月を迎えました。教会の暦では、今週の日曜日から待降節が始まり、救い主の誕生を待ち望む季節となりました。町ではあちこちでクリスマスの美しい飾り、イルミネーションが輝いています。キリスト者が少ない日本でも、クリスマスは、家族、友人で集まり、一緒に時間を過ごす人が大勢います。人々がこの機会に、幼子イエスと出会い、いつくしみ深い神様の愛を知ることができますように、祈りましょう。今日は特に、マリアとともにイエスの誕生を待ち望んでいた、聖ヨセフの姿を見つめながら、恵みを求めて祈りましょう。

わたしたち一人ひとりが心に抱いている意向、祈りを必要としている人々を神様の御手にゆだねて、しばらく思い起こしましょう。

(沈黙)

お祈りしたい意向を心の中にたずさえて、ローソクをささげましょう。後ろでローソクを受け取り、祭壇にささげ、席にお戻りください。

『カトリック聖歌集』No.103 「あわれみの神」① ②

マタイ福音書の言葉を聞きましょう。(マタイ1.18~24)

イエス・キリストの誕生の次第は次のようであった。母マリアはヨセフと婚約していたが、二人が一緒になる前に、聖霊によって身ごもっていることが明らかになった。夫ヨセフは正しい人であったので、マリアのことを表ざたにするのを望まず、ひそかに縁を切ろうと決心した。このように考えていると、主の天使が夢に現れて言った。「ダビデの子ヨセフ、恐れず妻マリアを迎え入れなさい。マリアの胎の子は聖霊によって宿ったのである。マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである。」このすべてのことが起こったのは、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった。
「見よ、おとめが身ごもって男の子を産む。
 その名はインマヌエルと呼ばれる。」
この名は、「神は我々と共におられる」という意味である。
ヨセフは眠りから覚めると、主の天使が命じたとおり、妻を迎え入れた。

森一弘司教の解説を聞きましょう。
マタイは、救い主イエスの誕生をヨセフの立場からとらえようとします。「聖霊によって身ごもっていること」を知って、戸惑うヨセフ。彼の心がイエスの誕生をどのようにとらえたのか。どのような感動につつまれたのか。どうして、マリアと一緒になることを躊躇したのか。ヨセフの心に合わせながら、わたしたちも、救い主の誕生の神秘に触れてみたいと思います。

まず、ヨセフの心を理解するために、マタイ福音書の冒頭が、アブラハムから始まる長い長い系図で始まることに注意すべきでしょう。それは、イエスの誕生を理解するために、とても重大で意味のあるものです。
アブラハムからイサクが生まれ、ダビデを経て、ようやくヨセフに至ります。

神はかつてアブラハムに、「おまえの子孫から救い主が誕生するであろう」という誓いを立てます。どんなに人々の罪が深くなろうとも、人々を救おうとなさる神の愛は、アブラハムに向けた誓いという形となって、具体化したのです。その誓いが歴史となったのです。アブラハムとともに始まった救いの歴史は、イスラエルの歴史の中に、働き続けたのです。
それは、イスラエルの人々の希望となりました。自分の目で神の誓いの実現を見ることができなかったアブラハムは、その希望を次の世代に渡します。次の世代はまた次に渡します。やがてメシアを待望する信仰が、イスラエルの歴史になります。それはアブラハムから始まってヨセフまで、1800年の神の悠久な愛の歴史、そしてイスラエルが希望し続けてきた歴史に、いまや終止符が打たれる瞬間が訪れたのです。

ヨセフは、旧約の歴史を貫く神の愛が決定的な形でこの地上に現れる瞬間に置かれているのです。旧約の人々が希望するだけであって、今まで誰ひとりその目で見ることもできず、手で触れることもできなかった神の愛が、具体的な形を取る瞬間に立ち会っているのが、ヨセフなのです。

いいなずけであったマリアは、天使ガブリエルのお告げを、夫になるべきヨセフに知らせたはずです。
人知でははかり知ることのできない神の偉大な力と愛の働きを前にして、正しい人であったヨセフは、たじろぎます。
旧約の義人たち。彼らは、聖なる神の前に畏れおののきます。聖なる神の前に自分たちは罪に汚れているという自覚があり、神から遠ざかろうとします。自分たちは神の働きに、ふさわしい存在とは思えないのです。小さな人間は、神の偉大な存在に触れることなどは到底できないと考えています。それが、旧約の義人たちの信仰感覚でした。
彼らと同じように、ヨセフは、神のあわれみの愛が、いよいよ決定的な姿をもって、この地上に介入してこようとするとき、畏れおののきます。
畏敬のうちに戸惑うヨセフを、天使が励まします。天使は救い — 主の神秘 — を明らかにして、ヨセフを安心させます。
「その名はインマヌエル。わたしたちとともにまします神」。つまり、人類の罪の汚れの中に入ってこられ、人類の罪を背負ってくださる神。聖なる神ではなく、限りないあわれみの神を、ヨセフは理解するようになります。この地上の労苦と重荷を背負うため、迷える子羊をさがし求めて、闇の中に降りてこられる神の姿に、ヨセフは目覚めることになります。

イエスの誕生に立ち会うヨセフ。数千年の歴史に終止符が打たれ、人々の希望がとうとう実現したのだという感動。聖なる、あらゆるものを超越しておられる神が、あわれみそのものとなって、わたしたちの中に誕生したという信仰。わたしたちもこうしたヨセフの心に合わせて、イエスの誕生の神秘に触れてみたいものです。

(『日曜日の説教集A年 大きな力に信頼して』森一弘著 女子パウロ会刊)


 プレゼピオ 聖イグナチオ教会


沈黙のうちに、しばらくふり返りましょう。

(沈黙)

聖ヨセフは、「沈黙の聖人」と言われています。聖書には、聖ヨセフに関する記述が少なく、彼の言葉は全く記されていません。しかし、マリアと喜びと苦しみを分かち合い、イエスを育て、あらゆる危険から二人を守りました。御父のみ旨に従うことによって、模範を示して与えてくださった聖ヨセフに感謝して、祈りましょう。

『パウロ家族の祈り』p.194 ②
   すべての徳の模範である聖ヨセフ、
   あなたの内的精神を、わたしたちのために求めてください。
   あなたは、愛と活動にみなぎる沈黙のうちに、
   宗教上、社会上のあらゆる規定を実践し、
   神のみ旨に従いながら、すぐれた聖性と光栄に到達されました。
   わたしたちのうちに、信仰、希望、愛が増し、
   賢明、正義、剛毅、節制の枢要徳が注がれ、聖霊の賜物が豊かに
   与えられるよう祈ってください。

   聖ヨセフ、わたしたちのために祈ってください。

3年前の聖ヨセフの祝日に、教皇フランシスコの就任ミサが行われました。教皇は説教の中で、次のようにおっしゃっています。
「ヨセフは主の天使が命じたとおり、妻を迎え入れた」(マタイ1.24)。この言葉はすでに神がヨセフにゆだねた使命を含んでいます。それは、守護者となるという使命です。ヨセフは誰の守護者となるのでしょうか。マリアとイエスです。しかし、ヨセフが守護する対象はさらに教会にも及びます。ヨセフはこの保護者としての使命をどのように果たすのでしょうか。彼はそれを分別と謙遜と沈黙のうちに、絶えざる同伴と完全な忠実をもって果たします。たとえ意味が分からなくてもです。マリアとの結婚からエルサレム神殿における12歳のイエスの出来事に至るまで、ヨセフはあらゆるときに配慮とまったき愛をもって同伴します。ヨセフは、生涯の中の平穏なときも困難なときも、妻マリアに付き添いました。住民登録のためのベツレヘムへの旅のときも、出産の不安と喜びのときも。エジプトに避難する悲惨なときも、神殿で息子を必死に捜すときも。その後の、ナザレの家での日々の生活の中でも、イエスに仕事を教えた作業場の中でも。

ヨセフは、マリアとイエスと教会の守護者としての召命をどのように果たすのでしょうか。常に神に目を注ぎ、神のしるしに心を開き、自分の計画ではなく、神の計画に進んで従うことによってです。

教皇は、聖ヨセフと同じように、つつましく、具体的に、また忠実に奉仕することを目指さなければなりません。そして、ヨセフと同じように、手を広げて神の民全体を守り、愛と柔和さをもって全人類を受け入れなければなりません。特に貧しい人、弱い人、小さい人、マタイが愛のわざに関する最後の審判について述べた人々を受け入れなければなりません。すなわち、飢えている人、のどが渇いている人、旅をしている人、裸の人、病気の人、牢にいる人です(マタイ25.31~46参照)。愛をもって奉仕する人だけが、守ることができるのです。

(2016年3月19日、教皇フランシスコの就任ミサ説教より)

(沈黙)

聖ヨセフは、イエスの誕生、幼年期、エジプトへの逃避など、多くの苦難をマリアとともにささげました。家族の必要を心に掛け、計らっていた彼は、「み摂理の聖人」と言われています。世界中で苦しんでいる人々のため、特にこの地上にまことの平和が実現しますように、戦争、飢餓で苦しんでいる人々のために、祈りましょう。

『パウロ家族の祈り』p.195 ③
   聖ヨセフ、
   あなたを勤労者の模範、貧しい人の友、苦しむ人と移住者の慰め手、
   み摂理の聖人としてあがめます。
   あなたは、この世で、天の父の善良さとその配慮を、身をもって示し、
   また、ナザレの職人として、貧しい労働者となられた神の子のために、
   労働の師となられました。
   あなたの祈りをもって、知的、精神的、肉体的労働に労苦する人々を助け、
   世界の国々が、福音に照らされた法律、キリストの愛の精神、
   正義と平和にふさわしい秩序を得られるようにしてください。

   ヨセフ、わたしたちのために祈ってください。

御子の到来によって、世界にまことの平和が実現しますように。平和の君であられる御子をたたえて歌いましょう。

『カトリック聖歌集』No.111 「しずけき」① ~ ③

この祈りの時間にいただいた恵みを沈黙のうちに感謝しましょう。

(沈黙)

祈りましょう。
恵み豊かな父よ、
世界が闇に覆われているようであっても、あなたはまことの光キリストによって、世界を照らしてくださいます。聖ヨセフ、聖マリアとともに御子の誕生を待ち望むわたしたちが、あなたの恵みに強められ、兄弟姉妹たちに救い主の誕生の喜びを伝える者となりますように。わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン。
+ 父と子と聖霊のみ名によって。アーメン。

これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。



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