お薦めシネマ
パッション
2004年4月
THE PASSION OF THE CHRIST
- 監督・製作・脚本:メル・ギブソン
- 音楽:ジョン・デブニー
- 出演:ジム・カヴィーゼル、モニカ・ベルッチ、
マヤ・モルゲンステルン、ロザリンダ・チェレンターノ
2004年 アメリカ・イタリア合作 2時間7分
映画「パッション」は、2004年2月25日(灰の水曜日)に米国で公開されるとすぐ、いろいろな意味で話題となり、日本にもそのニュースが入ってきました。名優メル・ギブソン監督の話題の映画が、いよいよ日本でも公開です。
四旬節にあわせて公開された「パッション」は、数週間にわたって興業1位をキープしていましたが、「反ユダヤ主義をあおっている」とか、「暴力シーンが耐えられない」とか、「心臓発作で、また亡くなる」……など、否定的なニュースが日本にも渡ってきました。しかし、伝えられていないこともあります。「この映画を見て、教会から離れていた人々が大勢、再び教会に来るようになった」という事実です。
米国で「パッション」を見た在米・日本人の芸能レポーターは、「私は仏教徒ですが、イエスの姿から伝わるものがあった。イエスがムチで打たれる場面では、涙がとまらなかった」とラジオで感動を話し、「ぜひ、その目でご覧ください」と日本のリスナーに薦めていました。
「パッション」は、「シスターのお薦め」でなく、「必ず見るべし!」の映画です。今までいくつもイエスの生涯が映画化されてきました。あの不朽の名作「ベン・ハー」の中にも、イエスの生涯が複線のように描かれています。「パッション」は、ゲッセマネの園でイエスが御父に祈る場面から十字架上で亡くなるまでの12時間の苦しみと復活を、今までの映画とはまったく違ったリアルさで描いています。
「13年前、私がまだ30代だったころ、もう自分には望みはないのかと思い悩み、人生のどん底にいました」と語るメル・ギブソン。彼は、信頼できる先輩のことばを信じ、ひたすら祈り、聖書を読み、黙想しました。そのとき、はじめて今までとは違った形でイエスの物語の理解が深まったそうです。そして、イエスの傷によって自分の傷が癒されたと感じたそうです。「その傷を人々にも語りたかった」と思ったメル・ギブソンは、人生の意味を、自らのパッションの中に示されたキリストをスクリーンに描きました。
リアルさを出すために、イエスの身体に与えられる傷だけでなく、セリフも当時使われていた言葉が使われています。イエスをはじめユダヤ人たちはアラマイ語を、ローマ兵たちは、当時話されていたラテン語を話します。
イエス役のジム・カヴィーゼルとメル・ギブソン監督
このような映画を作ったメル・ギブソンは、「すばらしい!」の一言です。これだけの映画を製作した監督のメル・ギブソンはじめスタッフたちは、きっと祈りと聖書の深めのうちに、互いに分かち合いながら映画を完成させていったことでしょう。
彼の信仰告白となったこの映画は、多くの事を語りかけてきます。各シーンで、聖書のことばが自然と浮かんできます。そして、「こういうことだったのか!」とその意味を理解できました。映画を見ながら、まるで黙想しているようでした。観客は、メル・ギブソンと同じ体験をすることになります。
映像的にもすばらしく、映画を見た後も、毎日の生活の中で、特にミサや聖書を読んでいるときに、映画のいろいろなシーンが思い出されてきます。
キリスト教の信徒、求道中の人、キリスト教に関心がある人はもちろん、キリスト教に興味のない方も、ぜひご覧になってください。「人間とは何か……」「人間は、何を考えているのか……」という真理に通じる深いテーマが、全編にわたって問いかけられます。