home>シスターのお薦め>お薦めシネマ>8月のクリスマス

お薦めシネマ

バックナンバー

 8月のクリスマス

2005年9月

8月のクリスマス

  • 監督・脚本:長崎俊一
  • 音楽:山崎まさよし
  • 出演:山崎まさよし、関めぐみ、西田尚美、井川比佐志、
         戸田奈穂、大倉孝二
  • 配給:東芝エンタテインメント

2005年 日本映画 103分


ほのぼのとした雰囲気で、人をやさしく包むミュージシャン、山崎まさよしが主演の映画です。彼のよさが作品に反映されていて、人間ってこんなにやさしい存在なのだ……と気づかされました。相手への思いを心の中で大切に育て、相手を思いやる……、そんな人としてのやさしさが、観る人の心を落ち着かせてくれる作品です。

物語

地方の小さな町。寿俊(山崎まさよし)は、父親から小さな写真館を引き継いでいる。撮影に訪れる町の人々とのかかわりに、ささやかな幸せを感じながら毎日を過ごしていた。父親(井川比佐志)との2人暮らしを心配して、妹の純子(西田尚美)がときどきやってきて、家のことをしていってくれる。

8月のクリスマス

ある日、友人の葬儀から帰った寿俊は、写真館の前に立っている若い女性を見つける。あわただしく現像を依頼するその女性は、近くの小学校の臨時教員の由紀子(関めぐみ)だった。この日から、由紀子はたびたび写真館を訪れ、現像を頼んでいくだけでなく、「おじさん」と寿俊に呼びかけて、いろいろな話をしていくようになった。

寿俊は、不治の病に冒されており、残りの時間が限られていた。しかし、誰にも話してはいない。DVDの使い方がなかなかのみ込めない父に対して、寿俊は、「俺がいなくなったら、どうするのか」といらだちを見せるが、口に出していうことはできない。寿俊は、自分がいなくなっても操作ができるようにと、手順を紙に書くことにした。

寿俊は、死に行く自分を受け入れ、静かにこの世から去ろうとしていた。しかし、今、由紀子との語らいが、寿俊の心にほのかな光をともした。寿俊には、明るく心に思うとおりに生きている由紀子がまぶしかった。由紀子も、学校での困難を、写真館のベンチに座り、寿俊と他愛のない会話をすることによって癒していた。

8月のクリスマス

由紀子とお酒を飲みにいく約束した日、夜、写真館で由紀子が来るのを待っていると、昼間撮影に来た一家のおばあさんが入口のドアをノックした。自分の葬儀用の写真を撮ってほしいというのだ。ファインダーをのぞくと、お気に入りの着物を着たおばあさんが、優しくほほえんでいた。

ある夜、寿俊は容態が悪くなり病院に運ばれる。一方、由紀子は、少し離れた町の小学校への赴任を打診される。寿俊の入院を知らない由紀子は、写真館を訪れるが、何日待っても店は開かない。由紀子は、写真館のドアに手紙を残して、新しい小学校へ行く決心をする。

やがて退院して写真館に帰った寿俊は、由紀子からの手紙を読む。そして、由紀子が赴任した小学校を訪れる。教室の窓から見える由紀子は、明るく生き生きと子どもたちに接していた。少し大人になったように見えた。寿俊は、声をかけることなく、その場を立ち去った。

写真館に戻った寿俊は、由紀子に手紙を書いた。しかし、それは投函されることなく、寿俊が撮影した由紀子の写真とともに、小箱の中に入れられた。寿俊は、スタジオに入り、自分の写真を撮影した。

 

何の変化もない、昨日と同じことが続く生活、そんな中でも「生きる」ということは、人と人との小さな出会いの中にちりばめられています。その静かな生活の流れの中で生きている寿俊を見ていると、「自分の死というものは、受け入れることができるのだよ」と教えてくれているように思いました。寿俊のように、自分の周囲の人々にやさしいまなざしを向けながら、日常生活の中で自分の死を準備していくことができたら幸せですね。

▲ページのトップへ