お薦めシネマ
奇跡の夏
2006年7月
Little brother
- 監督:イム・テヒョン
- 脚本:キム・ウンジョン
- 原作:キム・ヘジョン『悲しみから希望へ』
- 音楽:イ・ジス、ナ・スクジュ
- 出演:パク・チビン、ソ・テハン、ペ・ジョンオク、パク・ウォンサン、
チェ・ウヒョク - 配給:パンドラ
2006年 スイス映画 121分
- 2005年ニュー・モントリオール国際映画祭主演男優賞受賞
- 2005年大鐘新人男優賞ノミネート
- 2006年イラン ファジル国際映画祭コンペティション部門監督賞受賞
- 他、数々の賞を受賞
これは、実話に基づくお話です。いたずらが好きでやんちゃな男の子が、お兄ちゃんの病気をとおして、人を大切にし、思いやりの心で生きるようになり、少しずつ成長していく姿を描いた作品です。子ども中心の映画を、よくここまで違和感なく撮影できたなと思うほど、自然体の映画です。
物語
9歳のハニ(パク・チビン)は、3つ年上のお兄ちゃんハンビョル(ソ・テハン)と、共働きの両親の4人家族。ある日ハンビョルは頭が痛くなり早退した。ハニも、兄と一緒に家に帰った。ソファーで横になっているところへ、母(ペ・ジョンオク)が仕事から帰ってきた。ハンビョルは塾へ行きたくないと訴えるが、「また、塾をさぼったのね」と叱られる。しかし、ハンビョルはとても具合が悪かったのだ。嘔吐したハンビョルを見て、母はあわてて病院に向かう。
ハンビョルの病名は脳腫瘍だった。明るかった家庭が一変する。「手術すれば治るのだから」という父(パク・ウォンサン)のなぐさめも、母には空しく響いた。両親は不安になる。しかし、ハニには、ことの重大さが理解できない。手術を前にして、父がハンビョルの髪の毛を刈るのを見て「頭を開いて、悪いコブを切り取るのだ」という兄のことばが本当だと分かる。
おとうさんに抱かれて
ハンビョルの手術は無事終わり、大部屋に移る。そこには、小児ガンとたたかっている子どもたちがいた。消毒に来た看護婦さんがハンビョルにいろいろ話しかけるが、彼は黙ったまま答えなかった。母は「ちゃんと答えなさい」とハンビョルを叱る。そんな母に、ハンビョルは「痛みを我慢するだけで、精一杯なんだ」と答える。この子の苦しみがわかっていなかったと、母は涙する。
ハンビョルは退院し、家で過ごすようになる。ハニは、薬の副作用に苦しんでいるハンビョルと暮らしながら、健康な人には当たり前のことでも、病気の人には大変なことなのだということを学んでいく。
ハンビョルが再入院した病室で、ハニは兄と同じ病気のウク(チェ・ウヒョク)と出会う。ウクの家は田舎だった。兄がウクに親切にしているのが気に入らず、ウクに敵対心を持っていたハニだったが、あることから一時退院したウクとウクの家で一緒に過ごすことになり、そこでいのちの大切さを体験する事件に遭遇する。
ウク(左)とハニ
ハニは、夏休みの間、ウクと楽しく過ごす。ウクは元気を取り戻したかに見えた。しかし、ある日、ハンビョルとウクの病状が悪化する。ハニは、兄とウクに何かしてあげたいと考えるが……。
左から、映画のモデルとなった弟のチャンフィと弟役のパク・チビン、
兄のソルフィと兄役のソ・テハン
韓国の若い夫婦の生活や、病院の様子がみえて、韓国を知るという上でも、とても興味深く見ました。すべてを受け入れていくお兄ちゃんのあのやさしさは、いったいどこから来るのでしょう。ウクも哲学者のようで、心がひかれます。「奇跡の夏」に出てくる子どもたちを見ていると、心が明るく平和になってきます。