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 夏の祈り

2012年 8月

Atomic Bomb Home

夏の祈り

  • 監督・撮影・編集:坂口香津美
  • プロデューサー・編集:落合篤子
  • 音楽:日高哲英
  • ピアノ演奏:小林愛実
  • フルート演奏:新村理々愛
  • 語り:寺島しのぶ
  • 配給:ゴー・シネマ

2012年 日本映画 95分


長崎に原子爆弾が投下されて67年が経ちました。被爆した方々は高齢となり、今まで口を閉ざしていた人たちが、自分たちの姿や体験したことを語り伝え始めました。2度とこのようなことが起きないようにしてほしいと、不自由な体をおして、被爆当時の様子を劇にし、自らが演じています。できたら忘れたい、思い出すのも辛い出来事ですが、涙をこらえて演じています。

彼らが住んでいるのは、被爆者のための特別養護ホーム「恵の丘原爆ホーム」です。300人近い方々が入所しているこのホームはカトリックのシスターたちが運営しており、一日の生活は、シスターたちと祈る「朝の祈り」から始まります。坂口監督は、長崎の被爆者たちが、祈りに支えられて生きていることに心を打たれ、初めて長期撮影がゆるされたホームでの暮らしを、苦しい人生を送ってきた人々に寄り添うようにしてカメラを回しました。

親や家族を失い、被爆者ということで差別を受け、幸せな人生は、一瞬にして苦しみの人生に変わってしまいました。被爆した体は、高齢となった今はもっと辛いでしょう。しかし、彼らはその辛さを神への祈りの中で昇華し、過酷な人生を受け入れて日々を生きています。

遠くから訪れる高校生、近くから来る小学生など、年に数回、ホームを訪れる若い人々に、「被爆劇」を上演します。彼らは、ホームの職員のサポートを受けながら演じます。

夏の祈り
(C)2011 SUPERSAURUS


ホームでの生活の他に、被爆者たちの被爆状態、その後の人生を紹介します。また、長崎大学にある被爆者たちの病理標本保管室に入ります。そこには、米国が原爆投下直後から収集した病理標本5,000件が保管されています。被放射能によって傷ついた細胞は、今も放射能を出しているものがあり、ガンになる可能性を示しています。

高齢となった被爆者たちの“いのち”は、被爆者たちが体を張って演じる被爆劇を、涙を流しながら真剣に見入る生徒たち、辛い出来事を追った長崎の地で歌い継がれている「み母マリア」を歌う高校生たち、映像のバックに流れる曲を演奏する若いピアニストとフルーティストに受け継がれていくように感じました。


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