お薦めシネマ
聖者たちの食卓
2014年 9月
- 監督:フィリップ・ウィチェス、ヴァレリー・ベルト
- 配給:アップリンク
2011年 ベルギー映画 1時間5分
インドの西北部に位置する都市、アムリトサル。ここには、シク教徒にとってもっとも神聖な黄金寺院「ハリマンディル・サーヒブ」があります。「不老不死の甘露の池」と呼ばれる池の中央に置かれた大きな神殿。池のほとり、神殿の背後にあたる位置には、巡礼に訪れる人々のための食堂とキッチンがあります。この食堂では、一度に5,000人が食するという巨大な空間です。食堂は入れ替わり制です。「聖者の食卓」は、この巡礼者たちの食事を支える人々を追ったドキュメンタリー映画です。
宗教、カースト、民族、地位、年齢、性別にいっさい関係なく、どんな人にも同じように食事を提供するのが、この共同食堂「グル・カ・ランガル」の信念です。すべての人は平等であるとして、500年近く続いている習わしです。
大きな工場のような広いキッチンには、小麦粉、豆、コメ、牛乳が運ばれてきました。ひたすらニンニクの皮をむく人、小麦粉を練る人がいます。大きな鍋がいくつも並び、豆カレーが作られていきます。別の場所では、11枚ある鉄板で、チャパティが焼かれていきます。
食堂の前では、大勢の人が、お皿とコップを持って並んでいます。扉が開くと、人々は床に敷かれた布に端から座っていきます。すると、次々と料理をもった男性が前を通り、各人のお皿にチャパティ、ヨーグルトのサラダ、豆のカレーが、次々と配られていきます。お茶は、とんでもない高いところから、コップに配られていくので、あたりはこぼれたお茶で濡れています。そんなことはおかまいなし。少女も、大きな男性も、同じように食事をもらい、もくもくと食べていきます。食器の音と、「おかわりはどうかね」と尋ねる声が響きます。
食事が終わった人から席を立ち、出口では、食器を回収している男性がいて、受け取ったお皿とコップをかごの中へ投げ入れていきます。数がたまると、長い水槽がいくつも並んだ洗い場に持っていきます。すると、サリーを着た女性たちが流し横一列になった洗い場で食器を洗っていきます。
食費は寄付で賄われています。巡礼者の食事付を支えている人々はサダバールと呼ばれるボランティアで、300人ほどが働いています。
食堂では、食事を終えた人々が出て行き、掃除が始まりました。大きなゴムべらで、こぼれたお茶やカレーが寄せ集められ、みなが座る布も整えらました。床がきれいになると、入口で待っていた次の5,000人が、また入ってきます。毎日、ものすごい勢いでこの光景が繰り返され、毎日10万食が食されていきます。
映画はなんの説明もなく、黄金寺院での一日が映し出されていきます。喧騒と熱気、喧騒の中の心の静寂。スクリーンに映るものすべての光景がめずらしく、目を見張ります。祈りに来る人も、巡礼者を迎えるキッチンと共同食堂で働く人々も、みな同じ信仰に結ばれた仲間です。「人類、みな兄弟」。彼らは、どのような思いで、食堂を支えているのでしょうか?