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普通に死ぬ ~いのちの自立~

2020年10月

 普通に死ぬ

  • 監督・撮影:貞末麻哉子
  • プロデューサー:貞末麻哉子、梨木かおり
  • 音楽:木 -Kodama- 霊
  • ナレーター:余貴美子
  • 配給:motherbird

2020年 日本映画 119分

  • 第25回あいち国際女性映画祭2020 招待上映

ドキュメンタリー映画「普通に死ぬ」は、2011年に完成した映画「普通に生きる」の続編として、同じマザーバードによって製作されました。

「わたしに何かあったら、この子はどうなるの?」重症心身障害児を持った親なら、だれもが考えることでしょう。前作「普通に生きる」では、養護学校を卒業する子どもたちが、入所して施設で暮らすか、または家族の元で自宅で暮らすかというたった2つの選択肢ではなく、地域社会の中で、みんなと暮らすために、親たちが運動を起こし、「普通に生きる」という理念をかかげて開設した通所施設「でら~と」を追いました。本作「普通に死ぬ」では、前作完成以降の8年間を追っています。

映画は、前作でも登場した重い障がいのある小澤兄妹のご両親から始まります。妹の小澤美和さんが、心筋梗塞により突然、帰らぬ人となりました。23歳でした。お父さんは語ります。「死ぬということが、まったく頭になかった。友達がいろいろなところから葬儀に来てくれた。笑顔ひとつで、これだけ人を動かせるのだな、すごいな、と思った」。お母さんは、「美和ちゃんから、いろいろなことを学んだ。美和ちゃんの一生を見届けたいと思っていたけれど、それは間違っていたと気づいた」と語ります。

三男の育雄さんと二人暮らしだった向島宮子さん、子宮にしこりがあるのは分かっていましたが、障がいのある育雄さんを置いて治療に踏み切ることができませんでした。しかし、ステージ3の卵巣ガンと診断され、抗がん剤治療に専念することになりました。そこで、育雄さんは一時的に、静岡富士病院の一般病棟に泊まりながら、昼間は「でら~と」に通っていました。法人が運営するグループホームができた前年には、育雄さんの入居は考えていなかった宮子さんは、「子離れできていなかった。離したくなかったので、まったく考えていなかった」と語ります。京都で暮らしている次兄の竜己さんは、お母さんについて「一緒にいるのがあたりまえの生活だった。手がかかるので、生活の一部となってきた。自分が病になってはじめて、ケアホームに行くという選択肢が出てきた。『でら~と』にいる育雄さんはしあわせそうだ」と語ります。

長兄の雄一さんも、次兄の竜己さんも、育雄さんの在宅生活を支えることはできず、結局、育雄さんは静岡富士病院の入所施設である「さくら病棟」に入所することになりました。前作「普通に生きる」にも登場した「でら~と」設立代表者の小沢映子さんは、施設に入所することになってしまった育雄さんの、地域での生活を取り戻すために奮闘します。そして、映画ではもう一例、母が病に倒れ、生活の場を失ってしまう沖 茉莉子さんのケースが描かれます。育雄さんのケースを受けて「でら~と」のスタッフたちは、多様なケースへの対応を模索していきます。

途中、映画は希望をもとめて、兵庫県伊丹市や西宮市を訪ねます。そこでは、親の死を迎え、障がい者本人も還暦を迎えながら、地域で多くの人が自立生活をしていました。ある人は親を看取り、そしてさらに地域で生きていました。

 

映画では、自立した生活をしたいと、ひとり暮らしを始める障がい者を支えていくために、看護師、支援者、医師などが協力していく過程を追っていきます。重度の障がいを持っている子どもをかかえる生活は大変ですが、どの親、兄弟姉妹も、みなその子を愛し、大切にしていることがよく分かります。また、その子が地域住民として、多くの人々と交わり、楽しく暮らしていけるよう、自分の家を提供したり、一緒に暮らしたりする周囲の人々の姿は、なぜ、そこまでできるのかと驚いてしまいます。「サービスを提供するのではなく、ともに生活していく」という価値観の大切さを映画は訴えているのではないでしょうか。


  • 10月17日(土)~11月6日(金)名古屋市中村区 シネマスコーレ
    10月25日(日)兵庫県西宮市 プレラホール
    10月30日(金)~2週間予定 東京都品川区 キネカ大森
    11月13日(火)~ 大阪市西区 シネ・ヌーヴォ(木)

  • 「普通に死ぬ ~いのちの自立~」公式サイト
    http://www.motherbird.net/~ikiru2/

  • “Laudate”お薦めシネマ「普通に生きる ~自立をめざして~」

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